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話すキッカケになったのも妙だった。
音楽室でギターを弾いていると真侑と偶然2人きりになり、こんなオイシイシチュエーションを俺が逃すはずもなく果敢に迫った。
大人しそうな女だったから、強引にいけば流されてヤレると思っていたら油断した。
思いっきり引っ叩かれて逃げられるという展開に終わってしまい、それから視界に入るだけで厳重に避けられなす術もなかった。
そんな時また何気なしに音楽室にギターを弾きに行くと、ピアノの隅で泣いてる男がいた。
その男は真侑と同じ姿形をしていた。
俺は男に全く関心なく、その時初めて真侑に双子の弟麻耶を見て息がつまる思いだった。
あのサラサラな長い髪が首までの短髪で学ランを着ていても、紛れもなくそれは真侑に違いなかった。
「1曲聴いてく?」
まるで女に話しかける様に柔らかい声が出た。
楽器棚から1本のギターを出し、カッコ悪く体を縮こませている麻耶の前に腰を降ろした。
ギターを弾きやすい位置に抱え、弦を調節する様子を麻耶はじっと鼻を啜りながら見ていた。
涙でびしゃびしゃに濡れた顔は何とも間抜けで、触れると細いくせに肉付きの良い矛盾した頬のふにふにした感触に笑えた。
(コイツまじで男かよ。)
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