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実は真侑が何かの罰ゲームでこんな恰好をしているのではないか…?
顔にかかっていた短い髪を耳にかけてやると、耳の後ろの隅に小さな黒子が2つ並んでいるのを見つけた。
確かこの前真侑に迫った時、耳に顔を寄せてみたが黒子なんてなかった。
外見も中身も男っぽくなくてもやっぱりコイツは男で、弟の麻耶なのだ。
ほんの少しの淡い期待が外れ、明確になった残念な事実。
それでも俺の気は変わる事はなく、音を奏で始めた。
この俺が男を慰める為に涙を拭ってやったり、あまつギターまで聴かせてやろうなんて。
女でさえ特別のお気に入りか(体が)気紛れにしか弾かないのに。
俺と関係のある女が聞いたら、天変地異の前触れかって程煩く騒ぎ出すだろう。
それだけ俺は男には冷たく、話しかけられるだけでも鳥肌もんなのだ。
引き終わると自分もビートルズが好きだと笑った麻耶は女みたいに頬を染め、一方的に泣いていた理由を話し始めた。
先生に頼まれ楽器を返しに来たら、音楽室に出る幽霊の噂を思い出して動けなくなってしまったのだという何ともアホらしいものだった。
そんな事で怯えて泣くなんてやっぱり男に思えない。
気がつくと涙はもう止まっていた。
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