美樹×麻耶

5/13
前へ
/13ページ
次へ
夕暮れの渡り廊下で1人、窓の外を眺めている。 長い黒髪が茜色に染まり、吐息程度の風力で細く柔らかい真侑の髪は揺らめいていた。 グラウンドから部活の気合いの入った掛け声が聞こえるだけで、周りには誰もいないあの時以来のオイシイシチュエーション。 前回の反省も踏まえ急にがっついたりせず、徐々に距離を詰めてゆっくり頂くとしよう。 そこまで女に飢えてないし、あくまでこれは暇潰しの1つだから。 「まだ帰んないの?」 真侑は驚いた様に俺を見た。 2人だけのこの状態に警戒しているのか、手をぐっと胸の前に握りしめ困惑した表情をしている。 「そんなにビビんなって、何もしないよ。麻耶は帰ったのか聞きたかっただけだからさ」 努めて普通に、借りてた辞書を返しそびれたと辞書を見せる。 (こーゆう時の為に麻耶を使わなきゃ意味ねぇからな) 今にも走り出しそうな雰囲気を、真侑の全身からひしひしと伝わってくる。 「…摩耶は、帰ったよ…」 消え入りそうな声で答える真侑は目を合わそうとしない。 シカトを決め込まれたらどうしようかと思ったが、話はしてくれる様だ。 「そっか、じゃぁコレ麻耶に返しといてくれる?」 少しづつ真侑との距離を縮め、目の前で辞書を差し出す。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加