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俺の顔と辞書を交互に見ながら、受け取るか躊躇している様子に思わず苦笑する。
「えらく嫌われたもんだな。同じ顔でも麻耶にはすげー好かれてんのに、俺」
大きな黒目を更に見開き、真侑は「え…?」と呟いた。
窓から差し込む夕日が白い肌に反射して、鮮やかな山吹色が頬を染めている。
その時、音楽室でビートルズが好きだと言って笑った麻耶の赤く染まった頬を思い出した。
あぁ、やっぱり似てる。
「どうして…そう思うの?」
やっと目を合わせた真侑に、俺はイケると確信した。
それは自身への自惚れではなく、この表情を俺は幾度と無く群がる女にさせてきたから。
いけない事を躊躇する様な、自分が変わっていく予感に恐れながらも期待して、嫌だと言いつつ胸中ではそれでも何かを懇願する様な、良くない顔。
もう手の内に真侑を誘い出す事に成功したと、無意識に口角が上がっていく。
「だって文句言っても結局は俺の頼み拒否らないし。俺みたいに女にモテる奴って大体反感かって妬みの対象になるか、利用して喰う女見繕う為の当て馬にする為かのどっちかだからな。下心なく俺に近づく奴なんてアイツ位だ。」
「だから男が嫌いなの?」
ほらこの発言、完璧に俺に興味を示している。
女はちょっと闇を背負ってる様な、哀愁というギャップに弱い。
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