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学ランの下に着ていたTシャツを思い切り握り締められ、言葉にならない言葉を目で察しろとばかり凝視してくる。
(何なんだこの女?さすが麻耶の片割れ、妙な奴…)
真侑のテンパる姿を見て、だんだんいつもの自分のペースが戻ってきた。
やっぱり俺は相手の調子に合わせるやり方は向いてねぇな、強引に攻めて去る者は追わない。
1人の女に留まらず渡り鳥の様な、後腐れない割り切った関係が1番だ。
さっさとこの長い髪に巻かれてさよならしよう。
そう冷静な頭でまとめ、見上げる真侑の顔に手を添えた。
カッと更に熱くなったのを掌に感じ、ゆっくり顔を近づける。
俺の瞼がどんどん閉じていくのに対し、これでもかという程見開いていく真侑の大きい瞳。
もつ後1㎝で唇が重なろうとしていた時、突風が吹き荒れ真侑のサラサラの長い髪に遮られた。
タイミングが良いのか悪いのか、風が止んで仕切り直しと顔にかかった髪を耳にかけてやった。
「!」
その耳の裏には在るはずのない黒い点が2つ並んでいた。
(まさかコイツ、麻耶…?)
その瞬間に全ての合点が一致し、何ともしっくりとした気分になった。
茫然と腕の中にいる偽物の真侑を観察する。
サイズも感触も香りも本当に女その物で真侑にしか見えない。
その大きく潤んだ目も、もう少しで奪えそうだった唇も全部女のそれなのに。
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