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第4話 再び森へ
「びっくりしたぁ……。ここどこー?」
「いってぇー! ギターケースが、ハードケースがオレの膝をっ!」
僕たちは昨日の森へと来ることができた。
この景色を見るまでは不安だったけど、昨日と同じ光景をみてホッとした。
鬱蒼(うっそう)と繁る木々に、鈴虫の鳴き声、足元にはしおれたように俯いたツボミ。
ただあの女の子だけが、どこにも見当たらない。
今は別の場所に居るんだろうか?
「こんな場所があったなんて知らなかったわ。思いっきり音を出しても大丈夫そうね」
「そうだな。ギャンギャンにかき鳴らしても怒られないな!」
「アンタは不必要に音でかいんだから、ちょっとは遠慮しなさいよね」
2人がそれぞれ楽器を取り出したので、僕も慌ててケースを開いた。
手早く準備を済ませて、3人で向き合うようにして集まった。
「それで、何やるの?」
「練習曲は止めとこうぜ。思いだしちまうよ」
「じゃあ、これはどう?」
◆
僕は昨日と同じ曲を吹き始めた。
貧乏で楽器を買えなかったアーティストさんの曲。
僕がワンフレーズ吹き終わると、ミカが『トトタンッ』とビートを細かく刻みだした。
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