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原曲はバラード調のゆったりしたものだけど、ミカのおかげでサンバのような雰囲気になる。
ーーこれはこれで心地いい……。
コウイチもそれに倣(なら)ってコードを細かくかき鳴らす。
リズムを壊さないように、シャープにしっかりと。
たまに単音を弾いて、僕との二重奏のようなプレイも織り混ぜている。
しばらく演奏をしていると、コウイチのメロディと半音でぶつかってしまった。
一瞬で辺りは不協和音に包まれてしまう。
ーー失敗しちゃった?!
慌てて目を開くと、コウイチはいたずらっ子のようにニヤニヤしながら、また半音違いで音をぶつけてきた。
ーーまったく、子供みたいな真似しないでよね。
彼の陰謀を避けるようにして、メロディラインとリズムを変えた。
僕を見失ってコウイチはアワアワと音を探っている。
タタトタンタァンッ。
ミカから合図が飛ぶ。
『そろそろいいんじゃない?』というサインだ。
僕らはタイミングを揃えて、最後の1音を鳴らした。
◆
「コウイチ、さっきのは何よ。わざとやったでしょ?」
「だってさ、ソウマが目ぇ瞑って吹いてんだもん。ちゃんと顔を見合わせながらやりたいなーって思ってさ」
「あ……ごめんね。つい癖が出ちゃって」
ああ、そうだったんだ。
そこまでの意味があったなんて気づかなかった。
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