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低い音の時は膝を折り曲げ、高い音の時には膝を懸命に伸ばした。
せめて体の勢いを乗せられればと思って。
コウイチも懸命にかき鳴らしている。
左端のフレットを押さえてコードを鳴らしたかと思うと、そのままスライドさせ高音ギリギリまでを弾こうとしている。
まるでロックの技巧派のソロのように、慌ただしく音符を踊らせる。
怒っているのか、笑ってるのか、泣いてるのか、わからない表情のままで。
ミカは、いつものキレイな叩き方など忘れてしまったように乱打している。
その気になれば何時間でも演奏していられるよう、無理のないフォームを研究したらしい。
でも今はそんな行儀の良さは微塵もない。
少しでも魂に繋がる音を出そうと必死のようだ。
「いいねいいね、あとちょっと。もうすこしだよ!」
もっと上がある?
でもこれ以上どうやって……。
僕はがむしゃらに音を出し続けた。
手が届きそうで届かない。
姿形が見えたような、見間違いのような。
少女の誘導だけを頼りにして、ただ『上の方』を目指した。
その時だ。
全く予期していなかった『ポンッ』という音が響いた。
◆
僕は慌てて辺りを見渡した。
コウイチとミカも同じだ。
僕たちが出した音じゃない。
ーー花だ!
ついさっきまで萎れたようになっていたツボミ。
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