第5話  流星群

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低い音の時は膝を折り曲げ、高い音の時には膝を懸命に伸ばした。 せめて体の勢いを乗せられればと思って。 コウイチも懸命にかき鳴らしている。 左端のフレットを押さえてコードを鳴らしたかと思うと、そのままスライドさせ高音ギリギリまでを弾こうとしている。 まるでロックの技巧派のソロのように、慌ただしく音符を踊らせる。 怒っているのか、笑ってるのか、泣いてるのか、わからない表情のままで。 ミカは、いつものキレイな叩き方など忘れてしまったように乱打している。 その気になれば何時間でも演奏していられるよう、無理のないフォームを研究したらしい。 でも今はそんな行儀の良さは微塵もない。 少しでも魂に繋がる音を出そうと必死のようだ。 「いいねいいね、あとちょっと。もうすこしだよ!」 もっと上がある? でもこれ以上どうやって……。 僕はがむしゃらに音を出し続けた。 手が届きそうで届かない。 姿形が見えたような、見間違いのような。 少女の誘導だけを頼りにして、ただ『上の方』を目指した。 その時だ。 全く予期していなかった『ポンッ』という音が響いた。  ◆ 僕は慌てて辺りを見渡した。 コウイチとミカも同じだ。 僕たちが出した音じゃない。 ーー花だ! ついさっきまで萎れたようになっていたツボミ。     
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