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そして彼女は僕にもたれかかり、意識を手放してしまう。
「それ大丈夫なの? 救急車呼ぼうか?!」
「平気……だと思うよ。気を失っただけじゃないかな」
グシャリ。
無遠慮な足音が離れた所から聞こえた。
弾かれたように目を向ける。
そこには全く場違いな容貌の人影があった。
西洋の屋敷にありそうな、全身鎧。
一切曇りが無い銀の輝き。
大きな剣を杖のようにして持ち、僕らの方を向いている。
兜までしっかりと身につけていて、その表情は見えない。
「下らん……実に下らん。花が一体なんだと言うのだ」
「あなたは。一体誰なんですか?!」
「要らぬ……要らぬ。このようなもの、世界には不要でしかない」
男が剣を掲げると、青く光り始めた。
それはとても冷たい、体温の感じられない色。
その光に触れた草花はたちまち枯れて、土へと還っていく。
土肌が露出した場所には石畳が現れる。
そうやって一歩一歩踏みしめるようにして、鎧の男はゆっくりと歩み寄ってくる。
足元の白い花を散らしながら。
「おい、逃げようぜ。こんな危ないヤツに関わっちゃダメだ!」
「それがいいわね。ひとまずは安全な場所へ……」
僕は許せなかった。
どうしても、許せる気がしなかった。
幼い子供を泣かせた事もそうだけど。
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