第6話  少女の涙

3/4

7人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
そして彼女は僕にもたれかかり、意識を手放してしまう。 「それ大丈夫なの? 救急車呼ぼうか?!」 「平気……だと思うよ。気を失っただけじゃないかな」 グシャリ。 無遠慮な足音が離れた所から聞こえた。 弾かれたように目を向ける。 そこには全く場違いな容貌の人影があった。 西洋の屋敷にありそうな、全身鎧。 一切曇りが無い銀の輝き。 大きな剣を杖のようにして持ち、僕らの方を向いている。 兜までしっかりと身につけていて、その表情は見えない。 「下らん……実に下らん。花が一体なんだと言うのだ」 「あなたは。一体誰なんですか?!」 「要らぬ……要らぬ。このようなもの、世界には不要でしかない」 男が剣を掲げると、青く光り始めた。 それはとても冷たい、体温の感じられない色。 その光に触れた草花はたちまち枯れて、土へと還っていく。 土肌が露出した場所には石畳が現れる。 そうやって一歩一歩踏みしめるようにして、鎧の男はゆっくりと歩み寄ってくる。 足元の白い花を散らしながら。 「おい、逃げようぜ。こんな危ないヤツに関わっちゃダメだ!」 「それがいいわね。ひとまずは安全な場所へ……」 僕は許せなかった。 どうしても、許せる気がしなかった。 幼い子供を泣かせた事もそうだけど。     
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加