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第7話 心の在り処
目の前を塞いでも、男に変化は見られなかった。
僕を見ているのかすらもわからない。
兜の隙間は暗く、中の様子を知る事はできない。
「花など、想いなど、夢など、下らん。秩序だ。それさえあれば、人は生き永らえる」
つぶやきながら剣を高々と掲げた。
青い光はゆっくりとこちら側へ侵食を続ける。
冷たい風を伴って。
心の底から凍りつきそうになるほどの冷たさだ。
「早く戻れよ、殺されちまうぞ!」
「ソウマくん! お願いだから戻って!」
こんな超常現象を前にして、僕に何ができるだろう。
無力だと知りながらも見過ごす訳にはいかなかった。
ーーこの花を散らせてはいけない。
理由は無いけど、そんな確信を得ていた。
仲間たちの声を無視して光を押し返そうとした。
サックス用のハードケース。
唯一の道具を盾にするように、光と向き合った。
「貴様も同類か。小娘の同種か。無意味な妄想に取り付かれ、本質を見失う愚か者ども」
見間違いかとも思った。
でも、僕の両目がそれを否定する。
なんの変哲もないサックスが入ったケース。
それが暖色に染まり始めた。
それは見た目通りの温かみを秘めており、敵に立ち向かうように光を放つ。
この中には楽器しかないはずなのに……。
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