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それら全てが、遠い世界の出来事のように感じられた。
まるで僕だけが違う世界の住人のように、あらゆるものから拒絶をされたような気分。
無くしてしまった自分の居場所が欲しくて、街中をひたすら歩き続けた。
ーーそうだ、練習場所がなくなっちゃう。
ふと、そんな考えが浮かんだ。
我ながらどこかノンキだとは思う。
今までは大学のジャズサークルが持っている、部室兼スタジオを使えたけど、今後はそれも許されないだろう。
サックスはとにかく音の目立つ楽器だから、どこでも練習できる訳じゃなかった。
ーーどこか、迷惑にならなそうな場所はないかな。
街の施設や公園を思い出しながら歩き回ったけど、そんな都合の良い場所は見当たらない。
そして、やってきたのは河川の土手だ。
遠くには鉄橋が架けられていて、見慣れた電車が走っていく。
他には自転車を走らせるおじさんや、ジョギングをしている若い女性が見えた。
ここならちょっとくらい、大きな音を出してもいいよね?
土手から河原の方へ降りて行くと、草むらの中に小屋を見つけた。
長らく放置されているようで、入り口の辺りでさえ伸びきった雑草が生えていた。
屋内であれば、周りを気にせず練習ができそうだ。
廃屋なら勝手に使っちゃっていいかもしれない。
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