第1話  打ち捨てられた小屋

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それら全てが、遠い世界の出来事のように感じられた。 まるで僕だけが違う世界の住人のように、あらゆるものから拒絶をされたような気分。 無くしてしまった自分の居場所が欲しくて、街中をひたすら歩き続けた。 ーーそうだ、練習場所がなくなっちゃう。 ふと、そんな考えが浮かんだ。 我ながらどこかノンキだとは思う。 今までは大学のジャズサークルが持っている、部室兼スタジオを使えたけど、今後はそれも許されないだろう。 サックスはとにかく音の目立つ楽器だから、どこでも練習できる訳じゃなかった。 ーーどこか、迷惑にならなそうな場所はないかな。 街の施設や公園を思い出しながら歩き回ったけど、そんな都合の良い場所は見当たらない。 そして、やってきたのは河川の土手だ。 遠くには鉄橋が架けられていて、見慣れた電車が走っていく。 他には自転車を走らせるおじさんや、ジョギングをしている若い女性が見えた。 ここならちょっとくらい、大きな音を出してもいいよね? 土手から河原の方へ降りて行くと、草むらの中に小屋を見つけた。 長らく放置されているようで、入り口の辺りでさえ伸びきった雑草が生えていた。 屋内であれば、周りを気にせず練習ができそうだ。 廃屋なら勝手に使っちゃっていいかもしれない。     
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