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第2話 森の中の少女
「イタタタ、酷い目に遭ったなぁ」
穴に落ちた僕は、長い間地面の中を落ちていったようだ。
すべり台の要領で滑っていったおかげで、ズボンは土で汚れきってしまった。
ーーそれにしても、ここはどこなんだろう?
てっきり工事現場かと思ったけど、出口から言って違うようだ。
そこには重機や土木作業の道具やらは一切無く、背の高い木々が立ち並ぶ森の中だった。
足元は一面が花畑で草原特有の匂いが心地よい。
その花はというとツボミのまま顔を下に向けている。
どこか元気が無いように感じられた。
ーー土手の近くにこんな場所があったなんて、知らなかったなぁ。
辺りに人影はない。
車の音も、人の気配も全くしない場所だった。
空は赤く染まっていて、そろそろ陽も落ちそうだ。
遅い時間になる前に少し練習させてもらおう。
僕は楽器ケースを開いて、手早くアルトサックスを組み立てた。
浮ついた心を落ち着けるため、一呼吸置いて気持ちを切り替える
それから静かに目を閉じて、ゆっくりと演奏を始めた。
せっかくだから練習曲よりも自分な好きな曲を。
◆
この曲は、ある海外のアーティストさんが書いた古い曲。
生家がとても貧しかった彼は、楽器を買うお金が無かった。
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