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幼い頃から空き缶を拾い集め、わずかなお金を少しずつ貯めていき、サックスを手にしたのは20歳を過ぎた頃だった。
喜びのあまり起きている時間はもちろん、寝るときでさえ手放さなかったらしい。
その時の感動をもとに書かれた、とても華やかな曲。
生きる喜びと、達成感が溢れ出ている、僕の大好きな曲。
演奏に合わせるように虫の鳴き声も聞こえてきた。
なんとなくセッションしているような気分で嬉しくなる。
◆
ふぅ……こんな所で演奏するのも気持ちいいなぁ。
口を離して目を開けると、陽は暮れたせいか辺りは暗くなっている。
そしていつの間にか、目の前には一人の人間がいた。
背は低く、ベージュ色のワンピースを着た女の子だ。
両目は青く、髪は長くてサラサラの金髪。
きっと外国人の子供だろう。
歳はわからないけど、10歳くらいに見える。
「ああ、ごめんね。ここは君の家の庭なのかな? 空き地だと思って吹いちゃったんだ」
女の子は笑顔のまま首を傾げている。
参ったなぁ、日本語が通じないみたいだ。
これは長居なんかせず、とっとと退散した方がいいかもしれない。
「おにいちゃん、キレイな音だすね。すごく楽しかったよ」
よかった……言葉が通じるぞ。
と言っても、話すべき事なんかあまり無いけども。
「それ、なぁに?」
僕の方を指さしながら言った。
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