第2話  森の中の少女

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この楽器の事を聞いてるんだろう。 「これはね、アルトサックスって言うんだよ」 「あーとさっく?」 「ええとね。アルト、サックス」 「あうとせっ……」 それ以上言っちゃいけない! ある意味僕らの中では鉄板ネタではあるけれど! 君みたいな幼い女の子が口にしていいネタじゃないよ? 「お歌ならね、わたしもじょうずだよ。聞いてくれる?」 「ええと、僕はそろそろ帰ろうかなと思うんだけど」 僕の言葉を待たずに、女の子は歌い始めてしまった。 聞かずに帰るのは可哀想だよね。 でもここは人の家の敷地みたいだから、早く出て行きたいんだけどなぁ。  ◆ 女の子の歌は想像以上の歌唱力だった。 正確なメロディ、豊かな声量、そしてノビのある歌い方は、子供のものとは到底思えない。 声質も透明感があって、僕の逸る心をあっという間に鎮めてしまった。 それより、こんな歌い手に出会えるなんて運が良い。 僕は慌ててサックスで参加した。 メロディの隙間を埋めるように、時おり歌にちょっかいを出すように。 構成自体は単純な曲だから、即興でも問題なかった。 女の子は驚いたように目を大きくして、それから笑顔になって歌い続けた。 誰も居ない森の中で響き渡る二重奏。 このまま時間が止まってしまえばいいのに。     
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