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「な、な、なんで知って……! 昨日はいなかったって!」
「もう少し襟はしっかりした方が良いですよ。見えてますから」
そう言われて視線を落とすと、胸元にはいくつもの赤い痕がついている。
急いで隠すと、沖田さんは気まずそうに目を逸らしていた。
「まぁ……以前、貴方達に家を空けてもらった時同じ事をしましたから予想は出来てましたけど」
「や、やだ! 雪にそんな事……」
「じ、自分達だってしてるじゃないですか! それに僕は吉田みたいにそうやって見せつけたりしないですからねっ!」
「べ、別に見せつけてるわけじゃ!!」
「……と、とにかく、何かあったらすぐ隣を頼ってください」
コホンと咳払いをして頭を下げると、沖田さんは家を出て行った。
恥ずかしさで熱くなった顔の火照りは収まらない。おまけに昨日の事を思い出してしまったから、尚更だ。
ああっ! もう、稔麿の馬鹿っ! 慌ててちゃんと着れなかった私も悪いけど……。
しっかりと着物を着直して、手鏡で見えていない事を確認する。
夕方に雪が来るとなると余計に隠しておかなければと思った。見られるのは気まずい。
お互いのそういう事は知りたくないだろう。
1人きりの昼間は慣れているけれど、稔麿が暫く帰ってこない事がわかっているからか、いつもよりも長く感じる。
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