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先にこの沈黙を破ったのは意外にも吉田で。
フッと笑った顔はとても優しくて、拍子抜けしてしまう。
春のいる前ではいつも優しい顔をしているけれど、私だけの時にそんな顔が見れるとは思わなかった。
「同じ物頼むだけじゃなく、同時に言うとは思わなかった……って何? その顔は」
笑う吉田を見て呆気に取られる私を、不思議そうな顔をして見つめる。
”なんでもない”と言って首を横に振れば、さして興味はないのかそのまま話は流された。
「なんか、丸くなりましたよね。初めて会った時より」
「は? 太ったって事?」
「いや性格が。昔は敵意むき出しだったじゃないですか」
「そうだね。……春に絆されたかな」
春の名前を口にすると、さらに柔らかい表情に変わる。余程好きなのだろうか。
今じゃ敵味方は関係ないし、自分の姉をずっと支えてくれた人でもある。そしてなにより、最後には新撰組を助けてくれた。
「まあ、今でも斬りかかってこられたら、おちおち寝る事も出来ないですからね。隣同士に住んでますし」
「その要素はどちらといえば沖田の方が強そうだけど?」
「あはは……なんも言えませんね」
話がひと段落した所で丁度、頼んだ物が私達の前に運ばれて来る。
現代の寿司とは違い赤酢を使っていて、ご飯が赤いのがこの時代の寿司の特徴。
そして、乗っているのはたった三貫だけど、どれもが通常の寿司の二、三倍の大きさだ。
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