1章

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漸くお昼を食べる事が出来る。 海老と白身魚と漬けマグロの三貫は、どれから食べようか迷ってしまう。 んー、どうしよう。まずは……白身魚かな! 頬張ると味のついたお米と白身魚の淡白な風味が口いっぱいに広がった。 お腹が空いていたから、余計に美味しく感じる。 あっという間に一貫食べ終えて次は海老のお寿司に手を伸ばす。 またしても大きな口を開けて寿司にかぶりつくと、前から視線を感じて。 「なんか、動物見たいだよね。……昔、近くに住んでた家の犬と似てる」 「いふでふか? にへないでふよ~」 「ごめん。何言ってるかわからないや」 ゴクンと飲み込んだけれど、特に言い直す必要はないだろう。 その後は会話を交わす事なくお互いに黙々と寿司を食べた。 ……私の方が食べ終わるの早かったんだけどね。 吉田が席を立ったので、その後ろをついていく。お会計の時にお財布を出すと、片手で押さえられて。 「奢るって言ったよね。出さなくて良いよ」 「えっ、あっ、じゃあお言葉に甘えて……ご馳走様です」 本当に奢ってくれたものだから、驚いてお礼を言うのも戸惑ってしまった。 支払いが終わりお店を出ると、外はまだまだ明るい。 「雪ちゃんはこの後何かするの?」 「そうですね……仕事を探そうかなと」 ”へぇ”と言いながらこちらを見て興味ありげな顔をすると、ポンと手を叩いて今度はニヤリと笑う。 「一つ当てがあるからどう?」
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