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「只野さん、この部品が足りません。
このままだと、後1時間ほどでラインが止まります。」
只野が居る建物の2階、製造ライン脇のデスクに悲痛な声を上げてやってきたのは同僚の孤野矢 良(このや りょう)だ。
180cmほどある長身から整った顔立ちに困った眉を寄せた顔が、デスクに座り作業をしていた只野を見下ろしている。
綺麗な茶色の瞳が、只野に迫り込んで来たのだ。
「何? ちょっと待て。
それは予定通り入荷しているはず……。」
パソコン画面で入荷履歴を確認する只野。
こちらは黒髪に寝癖がついている。
ここ数ヶ月、睡眠時間を満足に確保できないほど忙しい。
会社としてはうれしい悲鳴だが、従業員は疲弊しきっていた。
無論、只野や孤野矢も例外ではない。
只野は黒い瞳で画面を確認すると
「やっぱり、予定通り入荷しているぞ。
何で足らないんだ?」
クルリとイスを回転させ、画面を覗こうとしていた孤野矢に問いかけた。
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