第1章 日常

7/16
前へ
/39ページ
次へ
  「ラインが早くて昨日予定数以上造っているんですよ。」 もう、手が付けられないと孤野矢が嘆く。 「なっ、また勝手に……。 ちょっと待て、確かバラシの作業が残っていたはず。 直ぐにバラシができるように、準備をしてくれ。 たしかCラインは今日使わないはずだから、そこで作業できるように準備を。 資材の方には連絡を入れておく。」 またか、とばかりに受話器を取り内線番号を叩く只野。 この工場で働くのは200名近く。 そのほとんどは外人の派遣だ。 社員は契約社員も含めても2割ほどしか居ない。 派遣社員の勤務時間や人数は原則、1週間前に派遣会社に連絡しなくてはならない。 派遣会社も人を集めるための時間が要るからだ。 しかし、日々変わる生産予定。 ラインも立ち上げ時と成熟時では生産の速度が違う。 部品調達予定も、孫、ひ孫、さらに原料までさかのぼれば、数ヶ月前に発注が必要なのだ。 正直なところ、生産予定を組むのは受注先からの発注書を待っていては間に合わない。 受注先からの情報を拾ってくる営業の担当者と生産予定を組む担当者が受注前に勘と経験から、見切り発注をしているのが現状だ。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加