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『え……っ!?』
声のした方を振り返った彼は、観客席の中央に浮かび上がった聖護獣のひとつに釘付けになった。
淡く水色に輝く長い髪が揺れ、その頭部には小さな一本の角。陽炎のように薄青に透き通った衣装がさやさやとたなびいている。
『ジゼ……ル……』
アトラがその場に凍りつく。するとその角を持つ聖護獣がスウッと宙を舞い、彼に近づいてきた。
『ダ、ダメだ、村に帰るぞリト! やっぱり俺はここにはいられない!』
「うわぁ……綺麗な聖護獣」
右往左往するアトラを無視して、リトはウットリと目を輝かせている。
『ジゼル様だ……』
「戦女神、ジゼル。まさか公爵のジゼルが試験官を?」
ザワザワと観客席が波立つ。その中を、また澄んだ声が渡った。
『名高きアトラ=モリスを相手にできる試験官などおりませんでしょう。わたくしはユリウス=シオン公爵の聖護獣、ジゼル。ここはわたくし達で……いかが? ユリウス』
優雅に振り返った先、観客席の中央で銀髪の若者が立ち上がる。
「面白い。思った通り今回は退屈しない」
そこからジゼルに引き寄せられるように宙を駆け、ユリウスは闘技場にフワリと降り立った。
「あれ? あなたさっきの……ユーリ!」
クスリと口元だけで笑った彼が、颯爽とローブを払う。
『な……! お前が公爵本人だったのか。しかもジゼルの宿主……? か、帰るぞリト、俺は聖警隊には入らん!』
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