花嫁は焔《ほのお》の護《まも》り姫

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 シールドが霞み、中から現れたユリウスとジゼルが同じように腕を差し出し、前方を八の字にまさぐった。 「えっ……?」  ズズズッと大気が蠢くような感覚に、アトラとリトの本能が危険を嗅ぎ取る。 「アトラ! これってまずいんじゃない!?」 『しまった! いきなりこんな大技……』  闘技場全体の大気が一瞬にして渦を巻き、リトとアトラを飲み込んで竜巻と化し天高くそびえ立った。 「きゃあああぁぁ……っ!」 『うおおおおっ!』  悲鳴など意に介さず、ユリウスとジゼルが畳みかけるように声を合わせる。 『「ラムレス!!」』  バリッ!と空に光の亀裂が走り、見事に調和した二人の呪文(スペル)に呼応して竜巻に雷が落ちた。  渦巻く大気がバチバチと白く光る帯をまといながら、更に激しく天に昇る。  観客は息を飲み、闘技場に木霊するのは弾ける雷電の雄叫びだけ。 「ああ、ジャマダハルの切れ味を知る間もなかった。……息はあるかなジゼル」 『さあ……どうかしら』  だがユリウスが腕を下ろしたその時、衰えを知らない竜巻が突然炎の渦に変化した。 「なにっ!?」 『……! これは……わたくしの風を利用している!?』
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