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ジゼルは慌てて風を収めようとしたが、激しい炎と熱風の上昇気流で風はもう制御できない。加えて、炎の竜巻の熱さに近寄る事も不可能。
やがて高くそびえる炎の頂点から、二つの影がポーンと飛び出した。
「来たぞ! ジゼル、上だ!」
ユリウスが上を見上げて身構える。
『いいえユリウス! 違……!』
シュッと炎の壁を何かが通り抜けた。
「つーかまえた。ユーリ」
空を仰ぎ見たユリウスの背中に、トンッと抱きつかれる感触。
『フーッ……。ジゼル、いつの世もお前は俺を痺れさせてくれるよ』
そう耳元で囁かれたジゼルは、背後からアトラに抱かれていた。
ヒラヒラと上空から、リトのシャツとアトラのマントが舞い落ちる。
「……すごい。火猿アトラの勝ちだ……」
誰かがそう呟いた途端、ウオォォという観客達の叫びで会場が揺れた。
「ジゼル様と公爵が負けた!? 小娘が勝った!」
『ぎゃああああ! アトラ様、ずでぎーー!!』
「なんとも見応えのある闘いだった。彼らが公爵の配下につけば、闇に堕ちた聖霊獣たちの脅威もまた薄れる。この国の平和も盤石だ。シオン公爵、万歳!」
国民たちの喜びと興奮が止まぬ中、ユリウスは長く息を吐き、腰に絡んだままのリトの腕を掴んだ。
「悔しいが見事だった。アトラの力ももちろんだが……リトラ。お前との息のあったコンビネーショ……」
ユリウスが腕を引くと、リトはズルズルと笑った顔のまま地面を引きずられていく。
「いやぁ……なんか身体、まだピリピリ……」
『あ、しまった。こいつ防御下手くそなんだった。フォローしてやるの忘れてた』
「ふ……ふふ。やったぁ……勝っ……」
アトラに抱き上げられた感覚を最後に、リトはそのまま何もわからなくなった。
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