花嫁は焔《ほのお》の護《まも》り姫

16/50
前へ
/309ページ
次へ
*・゜゚・*:.。.:*.。.:*・☆・*:.。. .。.:*・゜゚・*  その屋敷はいつもひっそりと静かだった。  家に仕える者も最小限で、ましてやこの(あるじ)の書斎には、普段は誰も近寄る事が許されない。 「ほう……あの火猿(かえん)アトラが現れたか。それで今は?」 「はい、聖警隊採用試験には合格しました。今は公爵家にいるようですが、配属先はこれからかと。実はその宿主(マスタ)というのが……」 「待て。もしや子供のような若い娘ではなかったか」  先を言い当てられて、報告をしていた男はやや不満げに頷いた。この情報にかなりの価値があると踏んでいたのに。 「やはりあれが。昼間、やけに大きな気の聖獣に乗って移動する娘を見たのだ。……名にし負うアトラ=モリスがあんな小娘に。クックックッ……」  目頭を押さえ、(こら)え切れずに主が笑みを漏らすと、男もへつらった笑いを合わせた。 「今日の報告は以上です。つきましては……その、お願いが」 「……例の物か」  主の笑いがピタリと止む。それに(おのの)きながらも、男は自分の欲求を抑え切れずにゴクリと唾を飲み込んだ。 「あ、あれが欲しくて……たまんないんですよ! 今まで通り公爵の動向は全て、逐一報告します。あれが無いと、もういくら女を抱いても……!」
/309ページ

最初のコメントを投稿しよう!

692人が本棚に入れています
本棚に追加