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その屋敷はいつもひっそりと静かだった。
家に仕える者も最小限で、ましてやこの主の書斎には、普段は誰も近寄る事が許されない。
「ほう……あの火猿アトラが現れたか。それで今は?」
「はい、聖警隊採用試験には合格しました。今は公爵家にいるようですが、配属先はこれからかと。実はその宿主というのが……」
「待て。もしや子供のような若い娘ではなかったか」
先を言い当てられて、報告をしていた男はやや不満げに頷いた。この情報にかなりの価値があると踏んでいたのに。
「やはりあれが。昼間、やけに大きな気の聖獣に乗って移動する娘を見たのだ。……名にし負うアトラ=モリスがあんな小娘に。クックックッ……」
目頭を押さえ、堪え切れずに主が笑みを漏らすと、男もへつらった笑いを合わせた。
「今日の報告は以上です。つきましては……その、お願いが」
「……例の物か」
主の笑いがピタリと止む。それに慄きながらも、男は自分の欲求を抑え切れずにゴクリと唾を飲み込んだ。
「あ、あれが欲しくて……たまんないんですよ! 今まで通り公爵の動向は全て、逐一報告します。あれが無いと、もういくら女を抱いても……!」
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