花嫁は焔《ほのお》の護《まも》り姫

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「あれ? ……なにこのヒラヒラした服」  いつの間に着替えたのか、リトはシフォンジョーゼット生地の緩やかな衣装を身に着けていた。  デコルテが大きく開き、その周囲は可憐な小花のレースがあしらわれている。 「ナイトローブだ。ジゼルが見立てて、侍女たちが気絶していたお前に着替えさせた」 「うわぁ……こんな可愛い寝間着初めて。それにすごく楽ちん」  胸の下で緩く締めたリボンも柔らかくて本当に着心地が良い。  傍のユリウスも白いシャツとトラウザーズだけの軽装で、寛いだ雰囲気が見て取れる。 「気に入ったか? まだ衣装はそこの衣装箪笥(ワードローブ)に沢山入ってる。それもこの部屋も、ここにある何もかもが今日からお前の私物だ」 「え……あたしのって」  寝台の上にチョコンと正座をして、リトは(かたわ)らのユリウスをまじまじと見つめる。説明を促す視線を、彼は軽く片手を上げて制した。 「その話の前に。お前の身上書を見たよ。ヒースラッド村の孤児院で育ち、両親は不明。先月、高齢であった院長が他界し、孤児院は封鎖……そこで自立を兼ねて聖警隊(セイントガード)を志し、ここへやって来たんだな」 「あ……うん、そうなんだけど。一番の理由はアトラ……」
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