花嫁は焔《ほのお》の護《まも》り姫

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 ふわりと腕が回されて、今度は背中から抱きしめられた。  次は何が始まるのかと警戒しても、背後の彼はただリトを腕の中に閉じ込めたまま身じろぎもしない。 「あ、あの……ユーリ」 「黙ってじっとしてろ。……このまま寝る」 「え? じゃあ肌が合うとかってコレの事? 裸でくっ付けばよかっただけ!?」  プッと後ろで笑い声が聞こえ、前に回された手がおもむろにリトの胸を掴んだ。 「やっ、ちょ……!」   「そんなわけないだろう……。でもなんだか残念そうじゃないか」 「そ、そんなこと、ない……けど」  カアッと顔だけじゃなく耳まで熱くなる。  残念とまでは言わないけれど、その先を知りたかったような知るのが怖いような……そんな複雑な気持ち。 「また明日からゆっくり教えていくさ。今夜はこうしていたいだけだ……」  静かで落ち着いた声が耳元に滑り込んでくる。胸を包む掌もただそこにあるだけで、おかしな動きをする様子もない。  「でもまあ……そうだな。確かに人と人の身体の凹凸(おうとつ)がこんなにぴったり合うとは知らなかった」  二つの(スプーン)を重ねたように、横たわったリトとユリウスの身体はいつの間にか自然と同じ曲線を描いている。  まるで最初から互いが対の者であるかのように。
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