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『ひどい……、ひどい』
『……すまない……』
公爵家敷地内の林の奥深く、金と水色にぼんやりと光る二つの聖獣。二つは一つに溶け合い、ゆっくりと螺旋を描いていた。
『わたくしは転生してユリウスの聖護獣になった時、今度はすぐに会えると思ったわ……。堕聖獣を相手にする、シオン公爵が宿主よ。人目にもつくし、噂にものぼる。なのにあなたは探してもくれなかったの……?』
『すまない……』
『そればかり……言い訳すらしてくれない。会いたいとも思わなかったの。いつもあなたはわたくしから遠ざかろうとする……』
ジゼルの瞳が悲しげに潤む。そこから目を離せずに、アトラは水色の髪に震える指を通した。
『……丘の上に風が吹くと、お前が起こしているのかといつも山の向こうを見ていた』
『アトラ……』
『村から出たいとリトが言い出した時、どこかでお前に会えるかもしれないと淡い期待に胸が躍った。自分が人目につけば、風の噂でお前の耳に入るかもと……それでも俺は村から出るのに反対し、人目につくのも避けた』
『わからないわ……何故……』
小さく頭を振るジゼルの言葉をアトラの熱い唇がそっと塞ぐ。
仄かに透き通っていた風の聖獣は、恋人に触れられた箇所から確かな肌の色を映していった。
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