花嫁は焔《ほのお》の護《まも》り姫

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「まだそんなことを。あたし達のコンビは、村じゃ負け知らずで通ってたのよ? この才能を、不穏分子も多いこの国の為に生かさなきゃ」 『お前は女の子だぞ!』 「それが何よ、この国の聖警隊(セイントガード)は男女問わずです。とにかく闘技場を探すの!」  一見、独り言の大きいおかしな娘にも見える。だがこんな光景もそう珍しい事ではない。  このシオン公国には、聖護獣と呼ばれる聖霊を体内に宿し、共存する者が多く存在している。  それは特定の人間の前に導かれ、同意を得てその者を宿主(マスタ)と定め、能力に基づき様々な恩恵をもたらす。  リトも、そんな聖護獣を宿す人間の一人だった。 「………闘技場?」    さわ……と風に乗って聞こえてきた声に、リトは傍の大きなブナの木へ視線を上げた。  そこにはこちらを見ている一人の若者。  サラリとした薄いブルーグレーのローブをまとい、銀色の髪が襟足から長めに伸びている。  聖警隊(セイントガード)を束ねるシオン公爵家の敷地内には居ても、どう見ても武官と言うより上品な文官の(たぐい)だ。 「わああ、人がいた! すみません、闘技場はどっちですか? あたし今日のガード採用試験を受けるんです」 「試験を? 君が?」
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