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ある夫婦の夜 2
午後七時過ぎ。
チャイムが鳴る。
あらかじめ待っていた峰子は、玄関のドアを開けた。
「お帰りなさい。出張、お疲れ様」
「ただいま」
英明が入ってくる。
その手には小さな包み。
「俺からの、お土産だよ」
「まあ、何かしら」
小さな箱に入った小さなケーキが二つ。
「デザートに食べよう」
「ええ、もちろん」
峰子が英明のジャケットを預かり、二人でリビングに戻る。
「良い香りだ」
「夕飯のタイミング、バッチリよ」
「流石は君だね」
「ありがと」
軽い口付け。
テーブルの上に並べられたヒレ肉のステーキを見て、英明は顔を綻ばせる。
「豪勢だね」
「お疲れが少しでも取れますように」
英明はいそいそと食卓に着いた。峰子も向かいに座る。
「さあ、食べようか」
「ええ。あ、そうだ。ねえ、お友達にね温泉に誘われたのよ」
「へえ、良いねぇ。行っておいで」
「ありがとう。優しいわね」
「まあ、ね」
英明は小さく笑う。
峰子も同じように微笑んだ。
静かな夜。
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