ある夫婦の夜 1

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ある夫婦の夜 1

 午後七時過ぎ。  チャイムが鳴る。  峰子はエプロンを外し、小走りで玄関に向かった。  鍵を開けると、同時にドアが開いた。 「ただいま」  入ってくるのは彼女の夫、英明だ。 「お帰りなさい。お疲れ様」 「早速だけど、明日急に出張が入ってね」 「そうなの? 随分急なのね」 「取引先の要望でね」 「ご苦労様。一泊するの?」 「すまない」 「寂しいけど、お仕事だものね。頑張って」  軽い口づけ。  峰子が英明のジャケットを預かり、二人でリビングに戻る。 「良い香りだ」 「あなたの大好きな物よ?」  ジャケットをハンガーにかけながら、彼女が言う。 「へえ、君の料理なら何でも大好物だよ」 「でしょ、だからそういう事」  峰子の笑み。英明はそっと彼女を抱き寄せた。  軽い口付け。 「さあ、食べようか」 「ええ」  ディナーはスペアリブだった。
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