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「だから、迎えに行かねぇって言っただろ」
「いや、ヒロユキなら普通迎えに来てくれる」
溜息をつきながら言うが、トオルはブレることなくそう言った。
「前までは姉さん家まで送ってくれてたのに、いつからか送ってくれなくなったし。なんか姉さん家に近寄らなくなったよね」
「・・・それがなんだよ」
「もしかして、姉さんを好きになっちゃったとか?」
「んなわけあるかっ」
的外れな言葉にヒロユキはそう叫ぶが、まだトオルはこちらを睨みつけてくる。本気で苛立っている様子だ。だが、こちらだって苛立ってくる。
「なんで俺がお前の送り迎えをしねぇといけねぇんだよ!あ?なにか?俺は幼稚園バスかよ」
「そういうわけじゃなくて、俺とお前、ずっと一緒だったじゃねぇか!それなのに何で俺から離れてくんだって話しだっての!」
「離れてく?は?誰が?」
トオルの言葉に、頭の中でブチリと何かが切れた音が聞こえた。
「離れてってんのはてめぇだろうが!いつも姉さん姉さん言って、俺と一緒にいることより、姉さんと一緒にいることを優先するのは誰だよ!」
「それはっ、俺は、姉さんが好きだから!」
「じゃぁいいだろうが!お前は姉さんとの時間を大切にすればいいだけの話だろ!そこに俺までいれてくんなっ!」
「なんだよその言い方!俺は姉さんも好きだけど、お前との時間も大切にしたいんだよ!」
「ざっけんな!」
ヒロユキはトオルの襟首を掴み、奥の窓にバンと押し当てた。
「てめぇは駄々を捏ねるガキかよ!」
「っ、あぁそうだよ!姉さんとお前が欲しいと思ってるただのガキだよ!」
トオルも負けじとヒロユキの襟首を掴み、怒鳴る。
(あぁ、その言葉は、)
こみ上げてくる何かを止めるものが見つからない。
(聞きたくない言葉だった)
まばたきなんてもう、通用しない。
「っ――――」
ボロリ、と。
涙が零れ落ちた。
それにトオルは目を見開き、驚いた様子だが、もう止まらない。
ヒロユキは涙を零しながらそのままトオルに口付けた。
「んンっ、やめ、ろってッ!!」
けれどすぐに拒絶するトオル。
分かってる。
分かってるよ。
「そうだよな、てめぇが好きなのは姉さんだもんな」
「ヒロユキ?」
涙が止まらない。
気持ちが、止まらない。
「俺は、ずっとお前が、トオルが好きだったよ」
いつからとか、そういうのはもう分からない。
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