第1章

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「だから、迎えに行かねぇって言っただろ」 「いや、ヒロユキなら普通迎えに来てくれる」  溜息をつきながら言うが、トオルはブレることなくそう言った。 「前までは姉さん家まで送ってくれてたのに、いつからか送ってくれなくなったし。なんか姉さん家に近寄らなくなったよね」 「・・・それがなんだよ」 「もしかして、姉さんを好きになっちゃったとか?」 「んなわけあるかっ」  的外れな言葉にヒロユキはそう叫ぶが、まだトオルはこちらを睨みつけてくる。本気で苛立っている様子だ。だが、こちらだって苛立ってくる。 「なんで俺がお前の送り迎えをしねぇといけねぇんだよ!あ?なにか?俺は幼稚園バスかよ」 「そういうわけじゃなくて、俺とお前、ずっと一緒だったじゃねぇか!それなのに何で俺から離れてくんだって話しだっての!」 「離れてく?は?誰が?」  トオルの言葉に、頭の中でブチリと何かが切れた音が聞こえた。 「離れてってんのはてめぇだろうが!いつも姉さん姉さん言って、俺と一緒にいることより、姉さんと一緒にいることを優先するのは誰だよ!」 「それはっ、俺は、姉さんが好きだから!」 「じゃぁいいだろうが!お前は姉さんとの時間を大切にすればいいだけの話だろ!そこに俺までいれてくんなっ!」 「なんだよその言い方!俺は姉さんも好きだけど、お前との時間も大切にしたいんだよ!」 「ざっけんな!」  ヒロユキはトオルの襟首を掴み、奥の窓にバンと押し当てた。 「てめぇは駄々を捏ねるガキかよ!」 「っ、あぁそうだよ!姉さんとお前が欲しいと思ってるただのガキだよ!」  トオルも負けじとヒロユキの襟首を掴み、怒鳴る。 (あぁ、その言葉は、)  こみ上げてくる何かを止めるものが見つからない。 (聞きたくない言葉だった)  まばたきなんてもう、通用しない。 「っ――――」  ボロリ、と。  涙が零れ落ちた。  それにトオルは目を見開き、驚いた様子だが、もう止まらない。  ヒロユキは涙を零しながらそのままトオルに口付けた。 「んンっ、やめ、ろってッ!!」  けれどすぐに拒絶するトオル。  分かってる。  分かってるよ。 「そうだよな、てめぇが好きなのは姉さんだもんな」 「ヒロユキ?」  涙が止まらない。  気持ちが、止まらない。 「俺は、ずっとお前が、トオルが好きだったよ」  いつからとか、そういうのはもう分からない。
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