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分からないけど、友達になって、親友となるまで仲良くなって、幼馴染になるまで一緒にいる間に、友達の好きから、恋の好きへと変わっていった。
「トオルのことだけが好きだったよ」
「や、めろって、ヒロユキ」
「俺はトオルがっ」
「やめろよっ!」
ドン、と胸板を押され、昨日セックスした位置に転がされた。
「っ!!」
しかしそれにどうこう言うこともなく、トオルはそのまま部室から出ていく。ヒロユキを、残したまま。
「―――――」
バタバタと走って行く音が聞こえ、そして遠くなる。それを聞きながら、ヒロユキは涙を零し続ける。
ここに独り取り残されたことが悲しいわけではない。
トオルのことが好きだという気持ちを跳ね返されたことが、苦しい。
ただ、認めて欲しかった。ただ、知っていて欲しかった。
この気持ちを。ずっと持っていたこの気持ちを。
(あー、)
ヒロユキはゴロンと仰向けに転がり、額に腕を乗せる。
(失敗した)
言うんじゃ、なかった。
―――キィ、
部室の扉が開く音がしたが、もう誰でもいいやと視線を向けずにいると。
「おーい、大丈夫か」
「・・・トウジ先生」
美術部の顧問である藤原トウジ先生の声が聞こえて来た。それに安心したせいか、またボロボロと涙が零れてくる。
「うわっ、なっさけねぇ」
「そんなこと言いなさんな。好きなだけ泣け、青春野郎」
「・・・どこから、聞いてた?」
「最初からぜぇんぶ」
隣りの教室掃除してたら、バンってすげぇ音したと思ったら、トオル坊ちゃんとヒロユキ野郎が喧嘩してるではありませんか!
「って感じよ」
「そうかよ」
ヒロユキは額から目の上に腕をずらし、零れる涙が見えないよう隠した――もう遅いけれど。
「しかしほんっとお前、トオル坊ちゃんに振り回されてるなぁ」
アレのどこがいいんだよ。
「トオルのこと、アレとか言うな」
「涙声で言われてもなぁあ?」
ニシシシ、と笑うあたり、この先生も性格が悪いのが分かる。そして授業中にも関わらずここで喧嘩をしていることについて怒らないあたり、教師としてもなっていないのが分かる。それでも、生徒に人気があるのは、ヒロユキにも分かることであった。
「お前、トオル坊ちゃんのどこが好きなの?」
「・・・わっかんね」
「まぁあ、いつの間にかってぇのはあるさなぁ」
でぇも。
「お前さんにはあんなガキより、大人と恋愛した方が合ってるよ、絶対」
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