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トオルはよく姉であるスズネの家へと遊びに行っていた。それこそ、一週間に2、3回。
学校からも近いため、スズネの家に泊まって、直接通うことも度々ある。いつもならば一緒に学校へ行くのだが、その時はトオルからラインが来て一緒に登校出来ないということを連絡してくる。
「ほんっと性格悪いよな、お前」
「褒められてる?」
「褒めてねぇよ」
その時の虚無感は尋常じゃないことに、トオルは気付いているのだろうか。いや、きっと気付いていないに違いない。
「まぁ、部室には行くっていうことで」
「はーい」
足の方向を変えることもなく、そのまま真っ直ぐ進む二人。
ミンミンと鳴くセミの声を気にすることはなく、互いの声だけを拾って、バカみたいに話して笑っていた。
―――だが、部室に着けば世界は変わる。
キィと音を鳴らして室内に入れば、具材の匂いが鼻につく。だが、絵を描く人間にとって、それは気分を高めるそれでしかない。
適当な場所に鞄を放り投げながらトオルが言う。
「ねぇ、いつも俺思うんだけどさ」
「あ?」
「毎度俺がモデルでいいわけ?」
「いいも何も、お前しかモデルいねぇだろ」
「いや、女の子とか可愛い子捕まえて来たらいいじゃん」
「へー、その時トオル君は何をしてるんでしょうねぇ」
「姉さん家に行く」
「スズネさんがいない時は?」
「えーっと・・・」
トオルは少し考えて。否、考えるフリをして。
「違う女の子捕まえて、ヒロユキが絵を描いている隣りでセックスしてる!」
「バカかてめぇ」
ヒロユキは赤色のスケッチブックを手に取り、バンと頭を叩いた。
「いって!」
「ほんっとてめぇは汚ねぇ奴だよ!」
「純粋な欲情男子と呼んでよ!」
「呼ぶかバカ!」
てかよ、
「何で絵を描いてる俺の隣りなんだよ」
別の教室や裏庭でもいいじゃねぇか。
「えー、だってさぁ」
叩かれた頭を押さえていたトオルの目が細くなる。それにヒロユキは、うっ、と顔を歪ませた。
こういう時のトオルは〝強い〟
「ヒロちゃんの、あの粘っこい、まるで独占欲の塊をぶつけているような視線を独り占めするんだよ?」
絶対集中させたくないよね。
「ちなみに、そのモデルになった子も喰べる予定」
「・・・お前にかかれば女は誰でも子羊だな」
「あったりまえー。性格は悪いけど、容姿は良いから、使えるもの使っとかないと!」
「性格悪いの分かってんなら少しは直せ」
「嫌だねー」
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