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「今日は遅くまでいてもいいんだろ?」
ヒロユキはスケッチブックをまた構えながらニインと笑う。
「描き終ってからたっぷり相手してやるよ」
「・・・・あとで後悔させてやる」
「さぁ?鳴くのはどっちかな」
ヒロユキはそう言いつつもスケッチブックで顔を隠し、トオルの見えない所でハア、と熱い息を吐いた。
(もう後悔はしてるっつーの)
熱くなっている身体の熱を冷ます為、自分のワイシャツのボタンを外してから、またトオルを描き始めた。
こういうことをするようになったのは、いつからだっただろうか。
中学生の頃から性欲というものが芽生え始めて、それを親友かつ幼馴染である互いにぶつけ合うのには時間が掛からなかった筈だ。
一緒にエロビデオを見て、一緒に抜き合いっこもして。そして気付けばそれ以上のこともしていて。でも、キスをするようになったのは高校に上がってからだ。それまでトオルの方がキスを許さなかった。その理由は簡単なこと。
『ヒロちゃん』
『なに、トオル』
『俺さ、昨日セックスしたんだ』
好きな人と。
―――そう、トオルには好きな人がいる。
それを知ったのは中学2年生頃だっただろうか。その頃にはもう二人で身体も繋げていて、でも付き合っているわけでもなかったから、その話を聞かされても文句一つ言えなかった。ただ『誰と?』と聞くだけしか出来なくて。そして、
『姉さんと!』
嬉しそうな笑顔を見ることしか出来なかった。
裏切られたなんて思ったことはない。別に他の女とセックスをしたって構わない。互いを縛り合っているわけではないのだから。それでも。
それでも、ヒロユキの心は酷く痛んだ。
それは今も、ずっと。きっと、この先も。
「なぁ、トオル」
「なぁにヒロちゃん」
「まだお前、スズネさんと近親相姦やってんの?」
「まぁねー」
「じゃぁ、まだスズネさんとセックスしてんだ」
「姉さんに彼氏が出来るまではするんじゃないかな?」
「彼氏が出来るまでって、お前彼氏が出来るの邪魔してんじゃねぇの?」
彼氏いないけど、弟とセックスしてますっておかしいだろ。
鉛筆を走らせたまま何ともないように話せば、トオルも何ともないように話す。
「まぁ世間一般から見れば可笑しいかもね。てか、俺が姉さんのこと好きな時点でおかしいし、セックスしてるのもおかしい。でもさ」
トオルは笑わずに言う。
「俺らの関係も十分おかしいよね」
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