白蛇さまの恋女房

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白蛇さまの恋女房

昭和の初期には、地主の力は、まだ健在でした。 わたしの生まれ育った田舎の山奥では、なおさらのことです。閉鎖的で封建的な、昔ながらのしきたりや権威の根強い地域でした。 あるとき、その山奥の村に、一人の男がやってきました。 年は二十三、四。それはそれは、キレイな男です。 女のように白く、なめらかな肌。 涼しげな切れ長の双眸(そうぼう)。 線が細く、浮世絵のなかから、そのまま、ぬけだしてきたよう。 名前は、玉木巳鈴(たまきみすず)。みすずさんです。 女名なのが、かえって巳鈴さんの妖しいふんいきにピッタリという評判です。 村の娘たちは、みんな、巳鈴さんに夢中になりました。 もちろん、わたしも……。
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