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このころ、地主の屋敷に娘があった。
容姿が、とても、みにくい。
村の娘たちは、金にあかした着物や、最新流行の洋服をきる地主の娘を、かげで、せせら笑っていた。
名前が、おカネだから、あれはカネじゃない、ガマだーーなんて、揶揄していた。
けれど、おカネも人並みに年ごろの娘だ。
巳鈴さんには、ひとめで首ったけになった。
巳鈴さんも金持ちの娘の家に婿入りするのは嬉しいことだったようだ。
その年のうちに、巳鈴さんは、おカネと夫婦になった。
村じゅうの娘が、やっかんだ。
「絶対に、お金目当てだよ。ガマのおカネさんなんて、好きになるはずないよ」と、みんな陰口をたたいた。
しかし、巳鈴さんは自分が、とてもキレイな男だということを、よく知っているようだ。
だから、結婚してからも、以前どおり、村娘たちと仲良くした。浮ついたウワサも、絶えない。
「小百合や。あんた、最近、おカネさんの亭主と仲がいいそうだが、変なことになってやしないだろうねえ?」
ある日、母が心配そうに、たずねてきた。
「いやね。お母さん。変なことって何よ」
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