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「ふうん。待っててね。ここだけ終わらせたら、休憩するから」
「さぼると、父さん、母さんにしかられるぞ」
「いじわるね」
早く、二人っきりになりたいのと、ささやく。
「今夜また、桜の木の下においで」と、巳鈴が、ささやきかえしてくる。
村で一番、きれいなのは、わたしだもの。
巳鈴さんだって、ほんとは、わたしのことが好きなはず。
夜になり、約束の神社の桜の木の下へ行く。
月光のなかで抱きあうと、巳鈴さんの優しさに我を忘れてしまう。
甘い吐息と、白い肌。
かさなりあうと、このまま、死んでもいいと思う。
そんなとき、巳鈴さんは、決まって言う。
「さっちゃんは、ほんとに、おいしそう。ちっちゃくてツルツルした、可愛いアマガエルだ」
小百合は、くすくす笑う。
「かわいそうにね。あなたの奥さんは、みにくいヒキガエルだものね」
あんな、みにくい女が、この美しい人に抱かれてるのかと思うと、それだけで悔しくてならない。
お金の力で巳鈴さんを買って、色の道具にしてる、あのガマが憎くて、しかたない。
「巳鈴さんは、なんで、あんな人と結婚したの? やっぱり、お金が目当てなの?」
「あれは僕の女房には、ちょうどいいんだよ。あいつは、みにくいガマだから。食う気にもならない」
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