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もしかしたら、二人は、ほんとの夫婦ではないのかもしれないと、そのとき、小百合は思った。
「かわいそうな、巳鈴さん。いいのよ。今夜は、たっぷり、わたしを食べていってね」
「そんなこと言っていいの? さっちゃん。ほんとに食べちゃうよ?」
にやっと笑う巳鈴さんは、まっしろな肌が月光に青く光って、なんだか魔性のよう。
蛇ににらまれたカエルの気持ちは、こんなものだろうか?
怖いほど、魅力的。
「わたしの白蛇さん。大好きよ」
無我夢中で、むつみあった。
すると、やぶのほうで、がさりと音がした。
誰かいる。あわてて、そっちを見た。が、巳鈴さんの体でかくれて、小百合からは見えない。
巳鈴さんは舌打ちをついた。
「おカネだ」
ガサガサ音がして、ガマは逃げていったようだ。
「悪いね。さっちゃん。今夜は帰るよ。あんな女房でも、大事だからねぇ」
巳鈴さんはガマをなだめるために帰っていった。
それから、数日後。
裏山で、近所のサチエちゃんの死体が見つかった。
死体は野犬におそわれたのか、バラバラにされて、内臓や肉を食われていた。
村人たちは、サチエが山で足をすべらせ、亡くなったあと、遺体を野犬が食いちらしたのだとウワサした。
でも、小百合だけは知っていた。
サチエは殺されたのだと……。
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