白蛇さまの恋女房

6/13
前へ
/13ページ
次へ
そのことがあって、巳鈴さんと距離をとるようになった。 その年の秋、小百合は求婚された。 ガマの弟にだ。つまり、地主の息子に。 もちろん、愛してるのは、巳鈴さんだけ。 でも、悪くない話ではある。 地主の跡取りと結婚すれば、残りの人生は、もう安泰だ。 それに、弟の耕作は、ガマほどヒドイご面相ではない。まあ、人並みの男だ。 夜のあいだ、ちょっとだけ、目をとじてガマンしていればいい……。 というわけで、小百合は地主の若奥様になった。 豪華な白無垢(しろむく)の花嫁衣装も、地主が用意してくれた。 小百合にとって、新しい生活は天国だ。 あこがれていたキレイな着物も好きなだけ着れる。 以前みたいに、朝から晩まで田んぼや畑で働かなくてもいい。 夫は気弱だし、義父は美人の小百合に甘い。 おまけに、同じ屋敷のなかには、巳鈴さんが暮らしている。 跡取りの耕作が結婚したので、ガマと夫の巳鈴さんは、同じ敷地のなかにある離れに引っ越した。 小百合たち夫婦の寝室から、中庭をはさんで、離れが見える。ちょっと、のぞくと、そこに巳鈴がいて、にっこり、ほほえむ。 秘めごとは、甘い。 小百合の置いた距離は、一瞬で、くずれさった。 以前以上に、熱く燃えあがった。 裏庭で。蔵のなかで。風呂場で。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加