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そのことがあって、巳鈴さんと距離をとるようになった。
その年の秋、小百合は求婚された。
ガマの弟にだ。つまり、地主の息子に。
もちろん、愛してるのは、巳鈴さんだけ。
でも、悪くない話ではある。
地主の跡取りと結婚すれば、残りの人生は、もう安泰だ。
それに、弟の耕作は、ガマほどヒドイご面相ではない。まあ、人並みの男だ。
夜のあいだ、ちょっとだけ、目をとじてガマンしていればいい……。
というわけで、小百合は地主の若奥様になった。
豪華な白無垢の花嫁衣装も、地主が用意してくれた。
小百合にとって、新しい生活は天国だ。
あこがれていたキレイな着物も好きなだけ着れる。
以前みたいに、朝から晩まで田んぼや畑で働かなくてもいい。
夫は気弱だし、義父は美人の小百合に甘い。
おまけに、同じ屋敷のなかには、巳鈴さんが暮らしている。
跡取りの耕作が結婚したので、ガマと夫の巳鈴さんは、同じ敷地のなかにある離れに引っ越した。
小百合たち夫婦の寝室から、中庭をはさんで、離れが見える。ちょっと、のぞくと、そこに巳鈴がいて、にっこり、ほほえむ。
秘めごとは、甘い。
小百合の置いた距離は、一瞬で、くずれさった。
以前以上に、熱く燃えあがった。
裏庭で。蔵のなかで。風呂場で。
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