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のぞきみたおカネは、きっと、小百合のことを、サチエだと勘違いしたのだ。
なぜなら、あのとき、巳鈴は小百合のことを、さっちゃんと呼んでいた。
幼なじみのあいだでは、サチエをさっちゃん、小百合のことは、ユリちゃんと呼びあっていた。
だから、さっちゃんはサチエだと思った……。
金で買った夫に相手にされない妻が、嫉妬に狂って愛人を殺したのだ。
だけど、小百合は、そのことを誰かに話すつもりはない。地主の娘だ。へたなことを言うと、こっちが、ぬれぎぬを着せられる可能性がある。
それに、ガマが警察に捕まると、巳鈴さんが舅や姑に、屋敷から追いだされてしまうかもしれない。
それは、こまる。
怖いと思いつつ、巳鈴さんとの仲は変わらない。
むしろ、ますます深まる。
「巳鈴さん。わたし、怖いのよ。こんなことしてて、いつか、ガマに見つかるんじゃないかしら」
「見つかったっていいさ。あいつに文句は言わせないよ。ねえ、さっちゃん」
「なに?」
「今夜は満月だね。また、あの神社で会わないかい? あそこは紅葉もキレイだよ」
巳鈴に誘われると、ことわれない。
あいかわらず、蛇ににらまれたカエル。
夜になった。
小百合は、ふらふらと屋敷をぬけだし、神社へ向かう。
愛しい巳鈴さんが待ってる。
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