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時限結婚
「あと一週間だな」
「あと一週間ね」
「……キミはどうだ? 」
俺は危うく妻のことを“おまえ”と呼びそうになったのをこらえ“キミ”にした。
世の女性は“おまえ”と呼ばれるのをあまり好まない。この土壇場でマイナスポイントを加算するのは得策とはいえない。
「どうって、何が?」
わかっているくせに。妻は自分から決して札を出さない。
「いや、何がって、あと一週間だろ?」
そう、あと一週間後には俺たちが入籍して三回目の結婚記念日が訪れるのだ。だからといってノロけているわけではない。今の会話をそうとらえられたとしたらそれは大間違いというものである。
結婚というものが“三年契約制度”に変わって随分たつが、皆うまくやっているのだろうか?
これはこの国の離婚率が急激に上昇したため、今から三十年前の2021年より施行された案である。
今更説明するほどのものではないが、まあ簡単に言えばこれは籍を入れた後“結婚”というゲームがスタートし、三年ごとにこのまま継続するかどうかを二人で相談して判定するというシステムだ。
やってみるとわかるのだがこれは離婚とはまた少し趣が異なるのだ。
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