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そう思ったら少し怖くて、でも会いたくて。僕は不安で服を握りしめていました。
「ロアールなら、もう少しで帰ってくるはずだ。あぁ、ほら」
「!」
シーグル様が指を指してすぐ、空が暗く陰っていました。
見上げた僕の前には、大きく優美な黒龍が旋回しています。
その影は直ぐに高度を下げてきて、そして途中でパッと光を放って人の姿に変わりました。
「シエル!」
「ロアール!」
目の前に現れた人に、僕の心臓は高鳴りました。
一つ年下のロアールとは幼馴染みで、小さな頃から沢山遊びました。
僕は弱虫で、のろまで。ロアールはそんな僕の事をずっと助けてくれました。
絶対に見捨てたりしない。ずっと、頑張れって手を差し伸べてくれる大事な人。そんな彼の事が、僕はずっと好きでした。
大人になったロアールはとてもカッコいいです。
癖のある長い黒髪に、大きくて強い光のある黒い瞳はいつも輝いていて、向けてくれる笑顔は今も元気をくれます。
好きで好きで、たまらないんです。でもそれを口にするのは恥ずかしくて、拒まれたら潰れてしまいそうで、ずっと言えずにいました。
でも、勇気を出すって決めたのです。
母様が泣かないように、僕は一つ大人にならないといけないんです。
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