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「どうしたんだ、シエル? 何か、困った事があるのか?」
側に来たロアールの大きな手が、僕の細い肩に触れて心配そうにしている。
彼に比べたら、とても貧相な僕は自信が無くて俯いてしまう。だって、体の厚みも身長も敵わない。父様は大きいのに、僕は全然で。
「シエル?」
「あの、ロアール! あの!」
言わなきゃ!
服の裾を握って、僕はギュッとお腹の底に力を入れた。そして、ブンッと音がしそうなくらいの勢いで頭を下げた。
「ロアールを、僕にください!!」
「…え?」
ロアールが、とてもびっくりした顔をしている。
僕は、ポロポロ泣いていた。
だって、あんまりいい感じがしなかった。
もっと沢山、言えばよかった。言葉が出てこなくてこれしか言えなかった。
父様なら、もっと沢山言えたのに。
どこが好きとか、いつから好きとか、沢山言える事があるのに。大事な事が出てこない。
「あの、シエル…?」
「好きです、ロアール。好きなんです、ずっと。ずっと小さな時から、貴方が好きでした」
涙声でただそれだけを言っている。
顔なんて当然上げられなくて、拒絶の言葉だけは聞きたくなくて、怖くて震えている。
撃沈覚悟だなんてカッコいいこと言えない。撃沈なんてしたくない。
だって、大好きだった。
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