【ロアール視点・R18】ロアールの初恋

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「黒龍の王都を抜けた先にね、気持ちのいい湖があるんだ。良かったら、行かない?」  遠慮がちな提案に、俺は乗った。というか、大歓迎だ。  結局そういう事の方が俺はむいている。  恥ずかしく笑って了承したら、シエルも嬉しそうに笑っていた。  それならと、俺はランチをテイクアウトの店にした。美味しいサンドウィッチの店でサラダも一緒に籠に詰めてもらって、それに飲み物を添えて。  そうして来た湖は、光を反射してキラキラしていて、気持ちの良い風が吹いている。 「気持ちいぃ!」  大きく伸びをした俺の少し後ろで、シエルが可笑しそうに笑っている。そんなシエルに向き合って、俺は周囲を少し確かめた。周りに人がいないか、それを気にして。 「あの…さぁ。えっと…まず座ろう!」 「え? あぁ、うん」  俺がエスコートしないと。思って力んで、結局上手くいっていない。そんなのが恥ずかしくてたまらない。  俯くと、シエルがそっと俺の手に触れた。 「あの、緊張してるの?」 「あ……。うん」 「僕もね、とても緊張してる。お付き合いなんて初めてだから、良く分からなくて」  そう言ったシエルが申し訳なさそうにしているのは、なんか嫌だ。  俺は情けない俺を叱責して、笑った。 「俺も、わかんないんだ」 「そうなの?」     
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