【シーグル視点・R18】寡黙な騎士をこの手に抱いて2

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 困った顔をするな。これでも俺は、精一杯にお前を誘っている。遊びじゃないんだ、察しろ。お前だけだぞ、こんな風にキスをするのは。  俺は散々遊んでも、キスはしない。  それは母が「ファーストキスは大事な人の為に取っておきなさい」と昔から言っていたからだ。  そんな風習この世界にはないのだが、小さな時からなんとなく憧れはあった。  こんな事を言って、お前は分からないだろう。だが、俺の特別をお前に渡した。大きな意味があるんだぞ。 「ルーセンス、答えろ」 「…私がお相手では、あまりに分不相応です」 「何が不相応だ?」 「貴方は王太子殿下。私は騎士でしかありません。そのような者が貴方に触れる事は、あまりに…」 「ならば俺が王太子を捨てると言えば、お前は俺に触れるか?」 「そんなこと!」  焦ったコイツが俺の肩を掴む。必死なその顔を見つめ、俺は笑った。 「王太子か…やはり要らん肩書きだったな」 「シーグル様…」 「この地位を欲して求めもしない者が集まり、かと思えば求める者はこの地位に臆して手も出さない。俺は…誰かを求める事ができないのか」  それは、苦しい事だ。  あまりに難儀で、あまりにショックだった。そして、今があまりに滑稽だ。  こんな事で拒まれるとは思わなかった。  ならばいっそ、命じればいいのかもしれない。コイツは俺の命令に逆らわない。     
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