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だがそれをしたら、虚しさばかりが押し寄せるような気がした。
「上手くは、行かないものなんだな」
「シーグル様…」
「もういい。下がれ」
年齢、地位、そんなものが邪魔をする。
俺一人の気持ちでは駄目なのだろう。命じればそこに心はなくなる。一時は良くても、徐々に虚しさが募る。これはもう、諦めるしかないのかもしれない。
だが、ルーセンスは思い悩むようにその場を離れない。俺の肩を掴んだまま、黙っているばかりだ。
「どうした?」
「…お慕いしているのです」
「はぁ?」
顔を赤らめ、酷く落ち込んだ顔で何を言い出すのか。今さっき俺を拒んだばかりだというのに。
それでもルーセンスは止まらない。酷くばつの悪い顔をして、寡黙な奴がここぞとばかりに話すのだ。
「貴方にずっと焦がれておりました。年甲斐もなく、分不相応だと分かりながらもお慕いし、貴方に触れられる事に恥ずかしながらも悦びを感じていました。浅ましい…近習としてあるまじき心です」
「ずっと…とは、いつからだ?」
「お会いした時からです」
ということは、俺が160、こいつは200を超えていたはずだ。
なるほど、確かにあの時分では変態か。そう思いながらも、どうしようもない愛しさがこみ上げるのだ。仕方がない奴だと、笑えた。
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