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結局、薬が反応する事はなかった。
俺はそうだろうと思っていた。出生率が上がったとはいえ、百発百中じゃあるまいし。
だが意外にもルーセンスが項垂れた。抵抗するのかと思っていたが、案外期待もしていたのかもしれない。
「気にするな」
「すみません」
「何故お前が謝る。竜人の子はそれほど簡単にはできない」
「貴方にスキルを付与されたのに」
「レベル20程度じゃお飾りのようなものだ。ないよりマシ程度の事で落ち込むな」
案外可愛いことにこだわる。
笑って、改めてルーセンスを見上げる。
なんとも可愛い、俺の恋人を。
「これから時間をかければいい。これから俺は、昼も夜もお前を離すことはないんだからな」
「え?」
「お前は俺の近衛だ。昼間は騎士として、夜は恋人として隣にいればいい。そうしてくれるだろ?」
問えばルーセンスの瞳から蕩けたような熱が引いて、精悍な色が戻ってくる。引き締まった表情が俺を見つめ、確かに強く頷いた。
そのうち、この屋敷はまた賑やかになるかもしれない。
俺の残像と重なるように、俺の子がこの屋敷を走り回る。そんな日は案外、遠くはないのかもしれないな。
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