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争い事を嫌う魔人族ですが、その周囲はそういうわけにはいきません。
ここは闇の魔力が溜まる場所。それに引き寄せられるように闇属性を持つ強いモンスターが結構な頻度で出るのです。
軍は二つ。街の治安を守る街警と、街の外に出るモンスターを討伐する部隊とです。街と森との間には障壁があり、滅多な事では街に被害が出ることはありません。
私が用のある人物はこの、モンスター討伐部隊にいます。
夜番の者が多くいる軍本部で、私はその人物を見つけた。
緩い黒髪に、同色の羊のような角を持つその人物は実に色気のある顔をしています。少し垂れた紫にピンクを混ぜたような色合いの瞳が私を見ると、形のよい唇をニヤリと笑みに変えた。
「久しぶりだねぇ、シキ」
「えぇ、久しぶりですねヴィー」
そこそこの長身で、細く引き締まった彼は楽しそうな笑みを向けてくる。
怪しい色気ダダ漏らしの彼こそが、ヴィクトール。モンスター討伐部隊の中隊長をしている男です。淫魔の血が入っているらしく、色欲そのままの感じがします。
「情報はやいねぇ」
「そのつもりで、ランスに漏らしたのでしょ?」
「うん。さすが、シキはわかってる。それでぇ? 手伝ってくれるのぉ?」
間延びするような緩い話し方とは裏腹に、ヴィーの視線は鋭い。それに私も頷いた。
「勿論、手伝いますよ。そのつもりで来ましたから」
「助かるなぁ」
「ではその前に、ベリーの所に挨拶に行きますよ」
この魔人族の軍の軍事総長であるベリアンスに一言挨拶すべく、私はヴィーを伴って行くことにしました。
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