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その時、森の奥からズシィィンという重たい音がした。明らかに他のアンデッド系とは違う重量感に、私もヴィーも表情を引き締める。
そうして現れたのは、見上げるほどに大きなモンスターだった。
「3つ首のキマイラ…ねぇ」
ドラゴン、獅子、雄山羊の首を持ち、胴は虎、尾は蛇の巨大モンスターは、目の前の小さな獲物を睨み付けている。獅子は既にうなり声を上げていた。
「面倒そうです。ヴィー、時間稼いでください」
「…あぁ、うん。巻き込まないでねぇ」
何をしようとしているか、正しく判断したヴィーは離れてキマイラへと一人向かっていく。距離を取った私は、手の中で黒と紫の光の球を作り出した。
魔法はイメージが大事。具体的な大きさや効果、その先がイメージできるなら特別な言葉はいらない。私に魔法を教えたランスのこれは、実に正しいものです。
私は手の中の球にイメージを具体的に組み込んでいく。
足元に広がる黒い穴、それは泥沼のようにはまった獲物をズブズブと飲み込んでいく。決して逃れず、騒ぐ者の体は穴より伸びた手が捕まえて離さない。飲み込んだ先は深淵の闇。飲み込んだ者を無へと還す。
「ヴィー、離れなさい!」
魔力のワイヤーで雄山羊の角を切り落とし、獅子を地に縛り付けていたヴィーが反応して私の後ろへと引いた。
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