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【シーグル視点】シーグルお兄ちゃんの幸せな苦悩(★)
俺の母は特殊なスキルを持っている。その名も「安産」。
子供ができず絶滅の危機にある種族のいるこの世界にあって、これほど魅力的なスキルは多分無い。
心優しい母はこのスキルを最初「呪いだ!」と思っていたらしい。
異世界人だった母にとっては、あまりに未知な分野だというのにそこが特化していたのは恐怖だったらしい。
それでも今は「これで良かった」と言っている。
愛情が一部過剰に溢れる父と出会い、大切に慈しんでいるからだろう。
そんな両親は俺にとって未来の目標だ。
でもそんな母は俺が産まれて違う悩みを持ったらしい。
このスキルが父だけに使われる事に申し訳なさを感じているらしい。
父は母に他の伴侶が出来る事を拒んでいるし、母も他の相手との間に子を設ける事を望んでいないからだ。
だが竜人族に子が少ないのは今も同じ。
心優しい母はそれを憂えている。
そんな母の願いなのか、それともこの世界の神の思し召しか、本来ならあり得ない事が俺達兄弟には起こっている。
スキル「安産」の継承だ。
母ほどのレベルではないものの、俺にもこのスキルは継承された。そして他の弟妹にもレベルの差はあっても継承されている。
母はこの事実を知ったときに「なんかごめん!」と半泣きになって謝っていたけれど、俺は謝られる覚えがないから疑問だった。
だって、素敵な事だ。
俺は将来の伴侶と幸せに生きられる。そしてその人との間に子を結ぶことができるのだから。
それでも、今のこの状況はなんだろう…
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