キスはいつも事件の始まり

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キスはいつも事件の始まり

 講習会から数週間が過ぎた、四月の終わりの月曜日。香は、刑事部捜査一課の課長室に呼び出された。 「……失礼します」  重い扉をゆっくり押して中に入ると、課長室には香の他にも男たちがいた。  課長室の手前に応接セットがある。その上座に、刑事部ではない男を見つけて香は目を丸くした。捜査一課課長より上座に座るのは、警務部長の吉田だった。  吉田が座る後ろに捜査一課課長の福本が控え、彼らの前に捜査一課三係係長の比留田が立っていた。珍しい取り合わせに戸惑いながら、香は比留田の隣に並んだ。 「遅くなりました。……あの、警務部長、なぜこちらに?」 「俺から説明するよ、穂積」  吉田の後ろの福本が香に答える。 「昼前に、事件の一報が入った。南王町(なんおうちょう)の水田の用水路で、男性の遺体が発見された、てな。まだ未確認だが、遺体の特徴から、今朝がた小野南署に捜索願が出された、小野市在住の男子高校生らしい。明日にも捜査本部が立つだろう」     
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